競技で対戦相手との勝負が、外側のゲーム。自分の能力を最大に発揮することがインナー・ゲーム(内側のゲーム)です。
テニスを題材にしていますが、スポーツだけでなく、実社会での活用についても述べています。
2000年第1刷、2015年には第15刷を重ねているロングセラーです。
この本の要点だと思ったことは、次の3つです。
- 命令するセルフ1、実行するセルフ2。
- 競争の真の意味
- 実社会でストレスから逃れるには?
命令するセルフ1、実行するセルフ2
試合中も練習中も、自分の内部でひっきりなしに会話しています。「おい、しっかりしろ、体の前でボールを捉えなきゃだめじゃないか」。こうした命令や励ましや注意が続きます。
命令している私をセルフ1、実行する自分自身をセルフ2、と呼びます。
一度ボールをしっかり打つ体験をしたら、セルフ2はどの筋肉をどう動かせばいいか、永遠に記憶します。セルフ1の命令システムよりも、セルフ2の実行システムのほうが優れています。
ところが、セルフ1は、セルフ2を信用していないので、いいとか悪いとか判断すると、すぐにセルフ1がでてきます。
「悪いショット」と判断すると、セルフ1は、何がいけなかったのかを考えはじめます。考えすぎて、ぎくしゃくして、また失敗してしまいます。
「いいショット」と判断すると、セルフ1は、何がよかったのかを考えはじめます。考えすぎて、ぎくしゃくして、次は失敗してしまいます。
どちらにしても、ストロークはどんどん悪くなり、プレーヤーは上達しないだけでなく、テニスを楽しいとは感じなくなっていきます。
セルフ1を抑えるためには、判断することをやめて、事実を観察することです。ボールがアウトになったら、アウトという事実だけを心にとどめます。
競争の真の意味
自分の能力の上限を体験するための障害は、サーファーにとっては波。テニスでは対戦相手です。
真の競争とは、ベストの能力を互いに体験しあうために、協力してお互いの「障害」になることです。
この考え方は試合への姿勢が変わります。相手がダブルフォルトするのを願うかわりに、彼の第1サーブが狙い通りに入ってくれることを期待するようになります。
相手の成功を祈る気持ちは、リターンを狙う自分の心を安定させ、より速く、より適切な動きをもたらします。今度はそれが相手にとって、よりチャンレンジングな要素となって返されます。
自分が勝つことで、負けた相手は惨めな思いをしているかもしれない、勝利に後ろめたい気持ちを持つことは、競争の誤った認識です。
相手を突き落とさなければ自分が上がれない、という概念は、プレーする者に常に罪悪感を感じさせます。しかし、真実は違って、相手を傷つける要素はないのです。
実社会でストレスから逃れるには?
ストレスの最大の原因は「愛着」という言葉で集約されます。何か変化が起きると、愛着を感じている自分の環境を失う不安がうまれ、自分がおどされていると錯覚します。
ストレスから逃れるためには、必要なときには「何を失っても、自分自身は大丈夫である」ことを強く認識しなくてはなりません。
この独立性の高い生き方は、自分自身の内側にすでに存在していた「安定性」を信頼することで生まれます。
内側の安定性を促進するためには、「今、ここ」に意識を集中することです。過去の失敗や栄光にひきずられることなく、未来への夢や心配にとらわれることなく、「今、ここ」に意識を集中します。